小児における中耳炎 Q&A
中央区学校保健会だよりに「小児における中耳炎 Q&A」のタイトルで寄稿させていただきました。
本稿が発行される 9 月中旬は、幼稚園や小学校での集団生活が本格的に再開する時期です。
暑い夏が終わり、秋が深まると朝晩の寒暖差が大きくなり、鼻かぜや鼻炎をきっかけとした「中耳炎」で受診されるお子さんが増えます。中耳炎は放置すると難聴の原因となり、言葉の遅れなど、お子さんの健全な発育に悪影響を及ぼすことがあります。今回は、小児の中耳炎について保護者の皆様からよく聞かれることを Q&A 形式でまとめました。
Q. 中耳炎にはどのような種類がありますか?
A. お子さんがかかる中耳炎は、大きく分けて「急性中耳炎」と「滲出性中耳炎」の 2 種類があります。 急性中耳炎は、中耳に細菌やウイルスが入り込み、急激に炎症が起こった状態です。耳の痛みや発熱、耳だれを伴うことが一般的です。 一方、滲出性中耳炎は、痛みはありませんが中耳に「滲出液」という液体が溜まり、聞こえが悪くなる状態を指します。急性中耳炎が治りきらずに移行する場合も多く、この 2 つは相互に行き来する密接な関係にあります。
Q. どのような症状があれば受診を検討すべきですか?
A. 「耳が痛い」「耳がつまった感じがする」などの訴えがあれば分かりやすいと思いますが、言葉が未発達な乳幼児の場合は注意が必要です。鼻かぜを引いているときに「頻繁に耳を触る」「機嫌が悪い」「夜泣きがひどい」といった様子、また「呼びかけへの反応が鈍い」「テレビの音量が大きい」といったサインが見られたら、中耳炎を疑って耳鼻咽喉科専門医への受診をおすすめします。
Q. 鼻みずが出ていると中耳炎になりやすいのでしょうか?
A. 中耳炎の多くは、鼻の奥の細菌が、耳と鼻をつなぐ「耳管」を通って耳に回ることで発症します。よくある誤解として補足すると、鼓膜に穴が開いていない限り、耳に水が入ることで中耳炎になることはありません。小さなお子さんは大人よりも耳管が短く、傾きも水平に近いため、細菌が入りやすくなっています。重症化や反復のリスクが高い 2 歳未満や集団保育に通うお子さんは特に注意が必要ですが、成長とともに次第に中耳炎になりにくくなります。
Q. 抗菌薬(抗生物質)は必ず飲まなければいけませんか?
A. 小児急性中耳炎ガイドラインでは、「軽症」の場合は、まずは抗菌薬を使わずに 3 日間ほど経過観察することが推奨されています。これは、お子さんの自己免疫力で治る可能性があることや、抗菌薬の乱用による耐性菌(薬が効かない菌)の増加を防ぐためです。 ただし、痛みが強い「中等症」や「重症」の場合、あるいは 3 日経っても改善しない場合は、アモキシシリンなどの抗菌薬を適切に服用する必要があります。風邪症状だけで抗菌薬を使用することは慎むべきですが、一旦処方されたら最後まで飲み切ることが中耳炎の再発防止に重要です。
Q. 中耳炎を繰り返さないために、家庭でできる予防法はありますか?
A. 以下のセルフケアが有効です。
1. こまめな鼻汁吸引: 家庭用の電動吸引器などで鼻みずを吸ってあげることで、中耳への 細菌感染を減らすことができます。口で吸うタイプのものはおすすめしません。
2. ワクチンの接種: 肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンは、中耳炎の発症や重症 化を抑える効果が確認されています。
3. 環境の調整: 受動喫煙は中耳炎のリスクを高めます。同居される方の禁煙は極めて重要 です。
4. 鼻すすりの禁止: 鼻すすりは中耳炎の原因になります。個人差はあるものの 3 歳以上のお子さんは鼻がかめるようになることが多いので、片方ずつゆっくりかませるようにしてください。
Q. 中耳炎のとき、幼稚園や学校に行ってもいいですか? プールに入ってもいいですか?
A. インフルエンザなどの感染症と異なり、中耳炎だから幼稚園や小学校に行ってはいけない決まりはありませんが、急性期で痛みや熱があるとき、あるいは鼓膜に穴が開いていて耳だれが出ているときは、プールはもちろんのこと、登園や登校も控えるべきです。特にプール(水泳)に関しては、中耳炎が治癒したことを確認してから再開するなど、より慎重な対応が必要ですが、個々の状況にもよりますので、主治医に相談されることをおすすめします。
Q. チューブを入れることがあると聞きました。どのような場合ですか?
A. 主に以下の条件に当てはまる場合に鼓膜換気チューブの挿入を検討します。
・滲出性中耳炎が 3 か月以上治らない。
・両耳共に 40dB(中等度)以上の難聴がある。
・鼓膜が薄くなって奥に張り付いている。
・急性中耳炎を頻繁に繰り返している(反復性中耳炎)。
鼓膜換気チューブを留置している間は定期的な通院が必要で、プールではキャップと耳栓の使用をおすすめします。
秋の気配が深まるこれからの季節、お子さんに中耳炎を疑わせる様子が見られた場合は、早めに耳鼻咽喉科専門医にご相談いただけますと幸いです。













